クマ太のコラム

★第1回★

家元先生と雅枝先生に
インタビュー!

第1回は、正派邦楽会三代目家元中島一子先生と、正派合奏団代表唯是雅枝先生のご姉妹にインタビューです。(2021年8月5日、旧正派邦楽会館3階ホールにて。)

インタビュー会場・旧正派会館ホールからの眺め

本日はよろしくお願いいたします。
早速ですが、HPによって初めて存在を知った方もいらっしゃると思います。広く皆様に知っていただくために、合奏団についてお聞かせください!

一子先生:正派邦楽会の中で設立された合奏を勉強し演奏する団体・・・それが正派合奏団ですね。使用楽器は、箏・三弦(地歌じうた三味線)、そしてベース(低音)箏である十七弦じゅうしちげん
当団体は、創立当初から入団試験があって、ある程度の実力なり能力が認められた人が入団し訓練をしていくという形でしたので、当時では珍しかったと思います。

当時・・・といいますと、正派合奏団はいつ創立されたのですか?

一子先生:正派合奏団の創始者・中島靖子(正派邦楽会二代目家元・正派合奏団創始者)の「第1回リサイタル」の時に≪黎明(あけぼの)≫という曲を正派邦楽会の会員とともに演奏しました。
その時、靖子の父の中島雅楽之都なかしまうたしと(正派邦楽会初代家元)がプログラムに『正派合奏団』と名付けたのが最初だと聞いております。
≪黎明≫は大きな編成の曲で、声楽が入ったり洋楽器が入ったりしますので、当時としてはすごく新しい試みであったのではないかと思います。今から75年前、昭和22年のことです。

雅枝先生:戦後2年しかたってないのです。

一子先生:そうですね。

雅枝先生:母・中島靖子(大正15年生まれ)は、昭和と同じ年齢なわけです。つまり22歳のころ。
この合奏団というのは音楽学校(現・東京藝術大学)で学んだ22歳くらいの靖子さんの夢だったのと思います。

代表・唯是雅枝先生、合奏団について熱く語ってくださいました!

では、正派合奏団の活動内容についてお聞かせください。

雅枝先生:通常ですと、東京では1クラス月に2~3回。それぞれのクラスが指導者の下、1時間半から時には2時間の勉強をしています。地方では月に1回東京からの指導者を迎え、指導を受けています。

一子先生:正派合奏団は、基本的には合奏を訓練する場所。互いに相手の音を聴くということが基本ですね。さらに作曲家の曲想や、曲の構成、強弱・緩急、といったディナーミクなどを整えながら曲を仕上げていくという、合奏ならではの醍醐味を味わっていただけます。

合奏団は母体である正派邦楽会にとっても、すごく大きな存在だった気がしますがいかがでしょうか?

一子先生:本当にそうですね。正派合奏団はいろいろな作曲家の曲・・・往年の作曲家では平井康三郎先生、藤井凡大先生、杵屋正邦先生に様々な曲を書いていただて演奏したり。これらの作品は正派にとっても大きな財産だといえます。のちに父・唯是震一と母が出会って結婚してからは、父も合奏団の存在があるから書けた曲というのがたくさんある、と申しておりました。

唯是先生の演奏会では合奏団はよく出演していたように思います。

雅枝先生:年に一回、唯是先生の作品演奏会、作品発表会があって。ほとんどが新曲でした。「合奏団ならもっとこれもできるだろう」と難しい曲も・・・。

一子先生:変拍子の曲リズムや音程の難しいものも多くて、パートによって全く異なった調弦で、自分のパートだけ弾いていると何だかわからないけれども、全体の音を聞いて、ワッすごい!とかね。

雅枝先生:十二音音階の曲もあって・・・、転調や掛押しもたくさんありました。

一子先生:他にも、パートがたくさん分かれる曲などもあって。そうすると曲の厚みとか、重なりとかが出てきますね。そういう曲も合奏団でなければできなかったことです。合奏団に興味をお持ちの方は、個人練習ではなかなか経験できない合奏というものの楽しさを是非知っていただきたいなと思います。

正派三代目家元・中島一子先生と。思い出話にも花が咲きました。

コロナ禍の中での合奏団の活動という事をお聞かせいただけたらと思いますが。

雅枝先生:レッスンの時間も短く、少人数にして。空気清浄機やパーティションも用意して、琴柱ことじも使用の度に消毒してもらいました。団員の皆様には前2週間の検温をお願いして。それでも緊急事態宣言になると、合奏団の活動を停止する決断をしなければならなかった時は、とてもとても辛いものでした。

地方合奏団には指導者の先生が東京方面から行きますよね、逆に言えば地方の方は指導者を迎えられるわけで、その判断は地方の合奏団の方も大変だったかと・・・。

一子先生:地方合奏団側からのお休みしたいという報告ももちろんありました。
それでも状況が良くなって、指導者が東京から行ける!となった場合には PCR の検査を受けていただき、感染対策をきっちりしました。

去年よりは今年の方が増えてはいますけれども(インタビュー時点)、随分と対策には慣れてきたように思いますが・・・。

一子先生:新たな日常というか、ニューノーマルの中でやっていく方法ということを、試行錯誤した結果ですね。実際、あるクラスの指導者は、曲の全パートの動画を撮り、団員に見てもらってコロナ禍でも勉強できるようにしていました。
このHPもコロナ禍だからこそ立ち上げられたものです。大変な日々でしたが、一歩踏み込めたかなと思っています。

コロナ禍が明けたら何か活動をこうしたいとかあったらお聞かせください。

一子先生:一番が定期演奏会。来年新しく正派邦楽会館が建ちます。その中には80席位のホール(松籟ホール)ができます。そこで手始めに合奏団の演奏会を考えてみたらどうかなって思います。団員の皆様中心に実行委員を立ち上げてできるといいですね。

雅枝先生:いいと思います。それに新しい会館では同時にオンラインもできる設備が整っていますのでぜひ活用していただきたいです。

一子先生:新会館の新しい機材を使って、オンラインという事が定着したら、東京で発信して移動距離がなく、視聴できる、地方のみならず海外にも発進できるっていうことにも・・・。

雅枝先生:コロナ禍前に、平井康三郎先生のお孫さんで国内外でご活躍の指揮者平井秀明先生に正派合奏団のご指導をお願いしたばかりでして。数回だけご指導いただけましたがすぐコロナで。ご指導の様子を全国の合奏団に配信できないかご相談していたところでした。

貴重なお話をありがとうございました!

オンラインで繋がれることの可能性が広がり、地方合奏団とも様々な事で繋がりができるかもしれませんね。

雅枝先生:コロナ禍の中で、世の中の皆さまが、発信することも、それをご覧になることもだいぶ慣れて、当たり前に近くなってきているのではないでしょうか。
オンラインなら、レッスンにいらっしゃれなくても色んな指導が見られて、勉強できるっていう可能性を感じています。

自宅で見学するだけでもいいですし、自身の音を消して(ミュートにして)一緒に弾くことも可能ということですね。

雅枝先生:はい。合奏団の真面目で品格のあるところはそのままに、新しい形での合奏団を作っていきたいです。

最後になりましたが、今ご覧になっている皆様にメッセージをお願いします。

一子先生:私にとって合奏団は正派邦楽会の誇りだと思います。自分が専門家という意識を持つ前から、合奏団が出演しているものはすごく安心して聴けるという存在です。どんな曲でも対応できる能力がある。いつも幕が開く瞬間、特に大きな演奏会の時は楽しみです。パッと幕が開いて合奏団が大勢並んでいて、「グワン」と出てくる音は迫力がありますよね。

雅枝先生:また多くの人が集まって、ひとつの曲を作っていく楽しさを味わって欲しいと思います。少人数で弾くのも大切ですけれども、それとまた違った厳しさと楽しさが合奏にはあります。それを体験してほしいし、できればもっとたくさんの方に入団して欲しいですね。

お話をお聞かせいただき、本日はありがとうございました!!!!